2018.10.16
十五夜と「まごわやさしい」

皆さん、こんにちは。七田式門前仲町教室です。
朝晩だけでなく、日中もかなり涼しくなって、真夏に比べるとぐっと過ごしやすくなってきたようです。
「天高く馬肥ゆる秋」ということわざにもあるように、過ごすのによい時期になってきて、馬も肥えるほど食欲も出てくると言われるほど、食べ物がおいしく感じられる季節でもありますね。
夏に暑さで食欲がなく“夏痩せ”してしまった方も、秋に食欲が戻ってきて体調も整えられたりしているのではないでしょうか。
また、子育てを考えた時にいったいどのようなものを食べさせるのがよいのでしょう。
ところで「中秋の名月」の言葉もあるように、月が綺麗に見える季節でもありますね。
十五夜にお月見をしながらお団子をいただくのもこの季節。
今回は十五夜と食育について、次の4点でお話ししていきましょう。
①十五夜と中秋の名月
②天高く馬肥ゆる秋
③秋(9月)に美味しい食べ物
④まごわやさしい
ちなみに、今年2018年の十五夜は「9月24日」だったそうです。
①十五夜と中秋の名月
1-1.十五夜、中秋の名月
旧暦では、1~3月が春、4~6月が夏、7~9月が秋、10~12月が冬とされていました。
また、旧暦では月の満ち欠けで日付を決めており、毎月15日は必ず満月となるように日付が設定されていました。
そのため、毎月15日に月を眺めるようになったことから「十五夜」と言っていたのですが、中でも秋の真ん中にあたる8月15日の月を眺めることを指すようになったようです。
また、8月15日が秋のちょうど真ん中にあたるため、この日に眺める満月を「中秋の名月」と呼ぶようになりました。
現在用いられている新暦では1ヶ月程度のずれが生じるため、9月7日から10月8日の間に訪れる満月の日を「十五夜」「中秋の名月」と呼んでいます。(1)
1-2.月見の風習
月見(単に月を愛でる慣習)は、日本では縄文時代からあると言われ、「竹取物語」には月を眺めるかぐや姫を嫗(おうな:老女、老婆)が注意する場面があり、月見を忌む思想も同時にあったと推察されます。
元は中国から伝わった風習であり、その始まりは、唐代の頃からということしか分かっていません。宋代の『東京夢華録』には、身分に関わらず街を挙げて夜通し騒ぐ様子が記録されています。
この風習が貞観年間(859-877)の頃、日本の貴族社会に入ってきました。平安時代の月見は徐々に規模が大きくなり延喜19年(919)には宇多法皇が日本独自の十三夜の月見を催しました。
当時の日本での月見は詩歌や管絃を楽しみつつ酒を酌む、といった雅味な催しで庶民とは縁のないものでした。この頃の月見は中国、日本ともに願掛けや供え物といった宗教的な要素はなく、ただ月を眺めて楽しむだけでした。
明代の中国では宴会に加えて、田汝成の『煕朝楽事』によれば、名月の日に供え物や月餅を贈り合う習慣が始まったとされます。
日本では室町時代に入ってからも名月の日は続きましたが、遊宴としては簡素になっていき、室町後期の名月の日には月を拝み、お供えをする風習が発生していました。
『御湯殿上日記』には後陽成天皇がナスに開けた穴から月を見て祈る「名月の祝」という祝儀の様子が記録されています。
東アジアには旧暦の8月15日には月見の成立以前からサトイモの収穫祭がある地域が多く、日本でもその日にサトイモを食べる習慣がありました。
月見が世俗化した江戸時代前期の記録によれは、十五夜の日は芋煮を食べて夜遊びをするのが一般的だったそうです。
その頃の庶民の月見には月見団子などの供え物の記録は見られず、家庭で供え物が行われるようになったのは中期以降のことと見られています。
江戸後期の風俗記録である『守貞漫稿』には十五夜の日は文机で祭壇をこしらえ、供え物として江戸では球形の、京阪ではサトイモの形をした月見団子を供えると記録されています。(2)
中国から中秋の十五夜に月見の祭事が伝わると、平安時代頃から貴族などの間で観月の宴や、舟遊び(直接月を見るのではなく船などに乗り、水面に揺れる月を楽しむ)で歌を詠み、宴を催しました。
また、平安貴族らは月を直接見ることをせず、杯や池にそれを映して楽しんだといいますから、何とも粋で風流な楽しみ方をしていたのですね。
現代では、月が見える場所などに、薄(すすき)を飾って月見団子・里芋・枝豆・栗などを盛り、御酒を供えて月を眺める(お月見料理)ことが多いです。
この時期収穫されたばかりの里芋を供えることから、十五夜の月を特に芋名月(いもめいげつ)と呼ぶ地方もあります。一方、沖縄ではふちゃぎ(吹上餅)と呼ばれる餅を作って供える風習です。
また、仏教寺院では、豊作を祈る満月法会を催すところもあるようです。
この他にも戦前から昭和中期にかけて(ところによって今日でも)、子供達が近隣の各家に供えてある月見団子や栗・柿・枝豆・芋・菓子類を、その家の人に見つからないように盗って回り、その年の収穫を皆で祈る(祝う)「お月見泥棒」という風習もあったそうで、実際には、その家の人は子供たちの行いを見つけても見ない素振りをしていたそうです。(3)
沖縄県宮古島では、人頭税が課せられていた時代から、旧暦8月15日の十五夜に、その年の租税の完納を祝うとともに、翌年の五穀豊穣を願う豊年祭が各地で行われています。
宮古島市上野村野原では、午前中に御嶽で礼拝し、夜には観月会をした後に青年男性の棒踊と婦人の輪踊りが行われるマストリヤーという行事が行われ、国の選定無形民俗文化財に選定されています。(4)
②天高く馬肥ゆる秋
「天高く馬肥ゆる秋」…空は澄み渡って晴れ、馬が食欲を増し、肥えてたくましくなる秋。秋の好時節をいう言葉です。
十五夜は、単に月を愛でるという慣習もありますが、地域によっては五穀豊穣を祈念する風習もあるので、この言葉と合わせると、何とも秋らしく感じられますね。
さて、この「天高く馬肥ゆる秋」ということわざですが、元々はやや異なる意味だったことをご存知ですか?
秋は空気も澄んでいて、空も高く感じられ、馬も肥えるような収穫の季節でもあります。
秋の季節の素晴らしさをいう句で、多く手紙などで時節の挨拶として用いられています。
この中にある「肥ゆる」は文語動詞「肥ゆ」の連体形で、杜審言(※1)の詩『蘇味道(※2)に贈る』に「雲浄く(くもきよく)して妖星(※3)落ち、秋高くして塞馬(さいば)(※4)肥ゆ」とあるのに基づいています。
昔、中国では、北方の騎馬民族の匈奴(きょうど)が収穫の秋になると大挙して略奪にやってきたので、前漢の趙充国(ちょうじゅうこく:前漢の将軍)はそれを見抜き、「馬が肥ゆる秋には必ず事変が起きる、今年もその季節がやってきた」と、警戒の言葉として言ったとされます。
しかし匈奴が滅びた後は、現在の意味で使われるようになったそうです。
「天高くして馬肥ゆる秋」「天高く馬肥ゆ」ともいいます。(5)
③秋(9月)に美味しい食べ物
日本には四季があり、それぞれの季節ごとに旬を迎える食べ物がたくさんあります。
中でも、「食欲の秋」という言葉もあるように、秋になると美味しい食べ物がたくさんありますね。
昔から「旬のものを食べなさい」とよく言われていますが、それはどうしてでしょう。
その前にここでは、秋の味覚のうち、9月に旬を迎える食材をご紹介していきましょう。
1)サンマ:ご存知の方も多いと思いますが、サンマは漢字で「秋刀魚」と書きます。秋の味覚の代表格の一つですね。さんまのDHA(ドコサヘキサエン酸)は脳の働きをよくし、生活習慣病を予防する効果があります。
最近は不漁で高値の年もありますが、昔から値段が安く庶民の魚として食べられてきています。
古典落語の「目黒の秋刀魚」も有名な噺(はなし)の一つです。
2)イワシ:イワシは成魚だけでなく、稚魚のうちからいろいろな形で食べられています。煮干しのほとんどはいわしの稚魚(その多くはカタクチイワシ)ですし、お正月にいただくおせち料理に入っている「田作り(たづくり)」もカタクチイワシです。また、カツオやブリなどの肉食大型魚の餌としても利用されているため、「海の牧草」「海の米」などとも呼ばれています。
イワシに含まれるカルシウムは牛肉・豚肉の10倍以上、ビタミンDはマグロの2倍含まれているなど、とても栄養豊富な魚です。
3)芝エビ:クルマエビの一種で、東京の芝浦で多く獲れたことからこの名前が付きました。体長15cmほどで海底の砂地に住んでいます。
古くから食用や釣りの餌として使われてきていますが、特に注目されるようになったのは、江戸のお蕎麦屋さんが芝エビを使った天ぷらそばを売り出してからだと言われています。
4)ナス:ナスは夏から秋にかけて収穫されるため、夏野菜としても知られていますが、9月頃になると皮が硬くなりより美味しくなることから「秋茄子」と言って持て囃されています。ことわざに「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉があるほどです。
大きさや太さ、形はバラエティに富んでいて、いろんな種類のナスが食べられています。食べ方もお漬け物や煮物、焼き物、揚げ物などどんな料理にも合うオールラウンダーです。
5)里芋:野生の山芋が山野に出来るのに対し、「里(畑)に出来る芋」から名づけられました。
熱帯のアジアを中心として重要な主食となっている多様なタロイモ類のうち、最も北方で栽培されている種類です。
栽培は比較的容易とされ、水田などの湿潤な土壌で日当たり良好で温暖なところが栽培に適しています。
6)レンコン:蓮(はす)の地下茎を肥大したものを食用としているものをレンコンと言い、筒状で断面に多くの穴が開いています。
原産国は中国またはインドとされていますが、日本でも今から2000年以上前の縄文時代には既にあったとする説もあります。
断面に多くの穴が開いていることから「先を見通す」ことに通じて縁起が良いとされ、お正月のお節料理にも用いられます。
また、蓮の花(レンコンの花)はヒンドゥー教や仏教など、宗教にも縁の深い植物です。
7)サツマイモ:サツマイモの種類はたいへん多く、中でも皮が赤く実が鮮やかな黄色でたいへん甘い「金時」や、南西諸島や沖縄などで多く見られ、実が赤紫色をしている「紅芋」などが有名で人気もあります。
サツマイモにはビタミンCがリンゴの6倍、夏みかんとほぼ同量含まれていて、また、食物繊維が豊富なため、美容食としても多く食べられています。
原産国は中南米でペルー熱帯地方とされます。
16世紀に頻繁に南米大陸を訪れていたスペイン人またはポルトガル人により東南アジアに導入され、フィリピン、中国を経由して1597年に宮古島へ伝わり、17世紀の初め頃に琉球、九州、その後八丈島、本州と伝わりました。
8)梨:梨はバラ科の植物で、日本梨、中国梨、西洋梨の三種類があります。日本梨(和梨)で代表的な品種に「二十世紀」「長十郎」がありますが、第二次世界大戦後にいろいろと品種改良されたり、新品種が作られたりして、現在は幸水、豊水、新高など様々な品種が生産されています。
日本で梨が食べられ始めたのは弥生時代頃とされていて、登呂遺跡などから、食用とした根拠の種子が多数見つかっています。
9)イチジク:イチジクは漢字で書くと「無花果」です。「花が咲かない果物」というイメージですが、花が咲かないわけではありません。イチジクは実の中に小さな花をつけるため、外からは確認出来ないのです。
それがこの漢字の由来になっているのですね。
そして、イチジクの食べる部分(可食部)は、実は果肉ではなく花托(かたく:花が育つ部分)なのです。実の中にあるプチプチしたもの、あれがそうです。
イチジクの原産地はアラビア南部とされ、日本には17世紀初めに渡来しています。
日本には中国から入ってきたため、異国からのものという意味を込めて「蓬莱柿(ほうらいし)」「南蛮柿(なんばんがき)」「唐柿(とうがき)」などと呼ばれました。
いかがでしょうか。
ここに挙げた他にも、9月に美味しい食べ物はまだまだたくさんありますが、ここには代表的なものを挙げてみました。
どれも本当に美味しいものばかりですね。
ちなみに、ここに挙げた食べ物は、七田式の各教室で使用している教材(カード)に記載されているものです。
ところで、昔から「旬のものを食べなさい」と言われているのはどうしてでしょうか。
野菜や魚介類にとって「旬」とは、「最も成育条件が揃った環境で育てられ、最も成熟している時期」なのだそうです。
その旬の時期に水揚げのあった魚介類や収穫された野菜類は、味が最も良いのはもちろんですが、栄養分も最も高い状態にあります。(6)
要するに、旬の時期の食材を食べることで、それぞれの食材に含まれる栄養素を、最も効率よく摂取することが出来るということなのです。
早い話が「旬の食べ物は体にいい」ということなのですね。
④まごわやさしい
七田式教育では、右脳開発を主として、子供の持つポテンシャルを引き出すためのお手伝いをしています。
その子の持つポテンシャルは、正しい食事によって蓄えられます。
インスタント食品やジャンクフード、添加物がたくさん含まれた食品、味の濃い食品ばかり食べていたら、子供のうちから糖尿病や高血圧などの生活習慣病にかかりやすくなるだけでなく、脳のポテンシャルが損なわれることにも繋がります。
脳や体や心は全て食べたものから作られていて、何を食べるかで健康や頭の善し悪しが大きく左右されます。
子供は自分の食べたいものを選ぶことが出来ません。
与えられた食べ物が体に良いものであろうとなかろうと、子供に判断は出来ないため、大人が子供に何を与えるか、何をどう食べさせるのかがとても重要なのです。
「子供の舌は十まで」と言われるように、人の味覚は10歳頃までにある程度決まると言われています。
子供の味覚は大人の2~5倍と言われ、小さければ小さいほど味覚は敏感です。
子供の食事には添加物を極力使わず、薄味にして、素材そのものの持つ旨味を感じさせ、素材や料理による味の違いを経験させてあげることがとても大切です。
それでは、どのようなものを食べさせるのがよいのでしょう。
その答えがこの項のタイトル「まごわやさしい」なんです。
バランスよく食べるとよいと言われている食材の頭文字を繋いだものです。
ま…豆類
ご…ごま・種実類
わ…わかめ・海藻類
や…野菜類
さ…魚類(小魚・青魚)
し…しいたけ・きのこ類
い…イモ類
「まごわやさしい」食は、体に必要な栄養をバランスよく、体に負担をかけずに摂取出来る理想の食事です。
では、そのバランスは?
人間の歯を見ると、理想のバランスが分かります。
人間の歯は、臼歯と門歯と犬歯が5:2:1の比率で構成されています。臼歯は穀物をすりつぶすため、門歯は野菜をちぎるため、犬歯は魚や肉を噛み切るための歯であると考えられています。
要するに、「まごわやさしい」食を、歯の構成比率と同じバランスで食べたらよいということです。(7)
人間の体はよく出来ているものですね。
冒頭にも書いたように、今年(2018年)の十五夜は9月24日だそうです。
時期的に、いろいろな食べ物が美味しくなる時期でもありますね。
「まごわやさしい」を意識しながら、バランスよくいろんな美味しい食べ物を食べて、十五夜にはススキを飾って大きな満月を見ながらお団子を食べたいですね。
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※1:杜審言(としんげん)…中国、唐代の詩人。
※2:蘇味道(そみどう)…中国、唐代の詩人。
※3:妖星…不吉なことの起こる前兆と考えられていた、不気味な星。
※4:塞馬…北辺の馬。胡馬。
(1)コトバンク「十五夜」(https://kotobank.jp/word/%E5%8D%81%E4%BA%94%E5%A4%9C-76962)
(2)鈴木晋一「たべもの史話」127-137 1999年 小学館ライブラリー
(3)西角井正慶「年中行事事典」65 1958年5月23日初版発行 東京堂出版
(4)文化遺産オンライン「野原のマストリヤー」(http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/200286/2)
(5)故事ことわざ辞典「天高く馬肥ゆる秋」(http://kotowaza-allguide.com/te/tentakakuumakoyu.html)
(6)ウェルネス研究所「管理栄養士の栄養講座」(http://www.natural-life.jp/eiyo_no22.html)
(7)しちだ・ライフ七田式食学とは「幼少期の食習慣が将来に与える影響」(https://shichida-life.co.jp/about/child/)